日ごろ思うこと
2009年08月01日
医師としていつも考えていることは、自分を信頼して通院してこられる患者さん方に一番良い医療を一番よいタイミングで提供するためにはどのようにしたらよいのかということです。
患者さん方の求めることはさまざまですから、まず真摯にひとりひとりの患者さんに向き合い、そのうったえによく耳を傾け、希求するものを理解し、癒し、治し、余病を未然に防ぎ、早期発見によって生命を救い、痛みを和らげ、心の支えとなって、ともに手をつないで心身ともに健康な長寿を全うするという目標にむかってひたすら努力し、歩いていく日々です。
医師というものは、個人差はあれ、患者さん方の信頼を糧として、そこからエネルギーをもらい生きていきます。
私も妻も医師である父をもち、食事の最中に呼ばれて行ってしまう様子や、夏休みの旅行が急に中止になることを何度も経験してきました。
そして、それを特につらいこととも感じないで育ってきました。医師という職業を当然のように人生の中に選択してきたのです。
平成6年に父の後を受けてこの地域での診療を開始してからもう何年にもなります。
この間、夢中になって地域の医療に取り組んできましたが、私の心の奥深くにある気持ちは、患者さん方にまだまだ伝わっていないかもしれません。
大学の医局に勤務していた時も、海外で癌の研究や医学教育に関わっていた時も、いつも臨床医として患者さんに向き合いたいという気持ちがありました。
人は、故郷を遠く離れた時にかえって自分のルーツに気づくものです。
私は現在の田村市滝根町広瀬に開業していた祖父不二雄から数えて家族で三代目の医師になります。
「医師として臨床の道を選択するならば自分を子供のころから知っていてくれる人々のために働きたい」というのが父が亡くなったときに私のだした結論でした。
以来、試行錯誤しながら今に至っています。
患者さん方が、長年、私を頼りにして健康管理を任せてくれていることを思い、刻々と進歩していく最新の医療情報を入手したり、最新の検査機器を導入したりして、さまざまなことを行ってきました。
スタッフもみな、私と心を合わせて患者さん方の人生の健康面での伴走者ならんと日々努力を続けてくれています。
私を頼りにしてこられる患者さん方ひとりひとりのためにベストを尽くし、一番良い医療を提供することが日々のテーマです。
中には、多くの医療機関を掛け持ちで利用されている患者さんもおられますし、他の医療機関が休診の時間に便利な診療を求めて電話をかけてこられる方もいます。
多くの場合、診療時間外には研修会や会議があって私は不在ですから、日頃から通院される患者さん方については、急変などすることのない安定した体調を維持していただくために日頃から全力を尽くして診療にあたり、また日常生活上の指導を行っています。
患者さん方が、体調よく毎日を過ごされ、休日をご家族と楽しみ、生き生きとした時間を少しでも長く過ごされることが私にとってのいわば真の報酬となります。
それでこそ、三代目としてこの地に帰ってきた甲斐があるというものです。
ご存じの方もいらっしゃるかも知れませんが、平成16年5月から19年6月までのあいだ、当医院は入院機能を稼働させていました。現在は人手不足のため入院機能を休業させています。
このときに感じたのは、医療というものの実態がいかに関わる人々の心情によって変わっていくかということでした。
単に医師や看護師の免許をもっている人員をそろえていればよいというものではないとつくづく感じました。
医師にしても看護師にしても、それぞれの思いは違います。単に金銭的な福利を追求していく人もいます。
看護師さんがその仕事を単に高額報酬をみこめる仕事としてしか考えていなければ、すぐ前の病室に重症の方が入院しているのに、ナースステーションで雑談の上大きな笑い声をたてるといったことも起こります。
このようなことの積み重ねが、私の疲労を増加させていきました。
幸い、現在のスタッフは私と心を一つにして働いてくれる人ばかりです。
ひとりひとりの患者さん方に真摯に向き合ってくれ、かかりつけ患者さんの顔が少しでもみえないと心配しているような人たちです。
このようなサポートと何よりも私とともに歩いてくれる患者さん方の信頼に支えられて、今の私の毎日があります。
このような日々に感謝しながら、自分を子供のころから知っていてくれる故郷の中で、医療というものを実践しています。