田村地方の医療の実状
2016年07月20日
本年5月21日に開催された田村医師会の総会で会長に再任され(3期)また6月5日に開かれた福島県医師会代議員会の選挙で福島県医師会の常任理事に選出されました。
これまでも理事として活動してまいりましたが、常任理事という重責を担うこととなり、気持ちを新たに頑張りたいところです。
大震災後5年を経た今でも本県の医療が大きな問題を抱えていることは明白です。
責任ある医師たちが個々の利益のみ追求することなくこれからの日本・そして本県の医療全体を考えて行動することが必要だと考えております。
田村医師会長としての立場から言えば田村医師会管区(田村市・三春町・小野町)のような大都市を有さない地域では地域内の医療の質は非常に重要なテーマです。
なぜなら都市部のように実力ある総合病院が複数存在し、受診者が医療機関選択の機会を持つことのできる地域とは異なり、この田村地方のように限られた選択しかできない地域では、その限られた資源である医療機関の質・実力の有無が受診者にもたらす影響は想像もできない大きなものであるからです。
例えを上げます。
心筋梗塞という疾患があります。
この循環器系の疾患は人によって前触れ症状がありますが、通常突然に発症します。
この疾患を発症したときには一刻も早い適切な医療の対応が必要になります。
郡山市やいわき市の住民がこの疾患を発症した場合を考えてみましょう。
両市には早期の適切な医療を提供できる実力のある病院が複数あり、救急対応を行っています。
この医療環境のもとで救命される確率は大です。
一方、この田村地方を見てみましょう。
この田村地方で心筋梗塞を発症したと仮定します。
このときに迅速に適切な医療処置を受けて助かる可能性のある地域は三春町とその近辺だけです。
田村市にはこの循環器系の疾患に救急対応できる病院はありません。
小野町の病院はそもそも救急対応を行っておりませんが、現状ではたとえ救急対応を行ったところで対応できる医師はいません。
このような地域の医療状況については、病院立地自治体の小野町そして田村市の首長さんたちには何年も前から再三にわたって医師会長としての責任から提言してまいりました。
本年度の田村医師会総会における会長挨拶(www1.tma.or.jp)では「事実を知りながら住民の不利益をそのままにする首長は住民に対する裏切りを働いているのだ」とまで言及しました。
そしてこれからの首長さん方の行動を住民は見守っていると加えました。
このような地域の実態を住民の皆さんにはよく知っていただきたいと思います。
そして住民の皆さんが自らの居住する地域の医療体制をしっかり調査して事実を知ること、そして何らかの行動に移すような活動が必要ではないかと考えます。
私たち医師の多くは自分を信頼してくれる患者さんの期待に応えようと頑張っています。
口には出さなくとも、患者さんたちの人生に幸多かれと心から祈りながら診療を続けているのです。
しかしながら思いだけでは患者さんたちを守り抜けません。
適材適所といいますが、必要な場所にその任に堪える十分な実力を持った人材が配置されて初めて医療が健全に機能するのです。
加えて、益々の高齢化・過疎化の迫る地域の将来を見据えた正しいビジョンを持つ医師が必要です。
そしてそのような環境を導くために、この地域に何が必要かを真に理解し、質の高い医療を提供できる医療圏の確立を目指して邁進することが医師会長としての私そして管区のすべての医師に求められています。
字面だけでごまかすのではなく、真に実力ある、公的な利益というものを理解する病院がこの地域に生まれ、救命率を上げ、医師たちの真の連携、医療と介護の連携の形が田村地方全体をより住みよい地域へと生まれ変わらせる将来を思い描き、その実現のために、私たち田村医師会に住民の皆さんの理解と協力をいただきたいと考えています。
自らの、そして将来を担う若者たち、子供たちのために、この田村地方の医療の質を上げるために声をあげてください。
福島県医師会の力強い応援を受け、田村医師会は福島県が進めるこの田村地域の医療構想の実現に全面的に協力してまいります。
皆さんの応援をお願いいたします。