C型肝炎の感染
C型肝炎
2008年08月04日
現在、肝炎を引き起こすウィルスとしてA,B,C,D,E型の5種類が存在することがわかっています。このうちA型肝炎ウィルスとE型肝炎ウィルスは以前から口から感染することが知られており、下水設備が十分に整っていない後進国では、雨期の河川氾濫時などに大流行がみられます。B型肝炎ウイルスは、血液を介して感染し、輸血や血液製剤の使用、あるいは薬物中毒患者の静脈注射針を共用しての回し打ち、医療従事者が誤って針をさすことなどにより感染することが知られています。
もう一つのB型肝炎の大きな感染経路は母子感染(垂直感染〉です。出産時に子供は母胎の血液と否応なく接触し、狭い産道を通ったりする過程で感染するものと考えられます。このため、家系内に多数のB型慢性肝炎患者、B型肝炎ウィルス(以後 HBVと呼びます)保有者、肝癌患者がみられる家系があります。
さらに、血液、体液との濃厚な接触による感染も存在します。すなわち、性交による感染であり、HBV保有者の多い東南アジアなどに旅行した人がB型急性肝炎になる例が認められます。
では、同様に血液を介する感染が知られているC型肝炎ウイルス(以後HCVと呼びます〉に関してはどうでしょうか。母子感染は存在するのでしょうか、あるいは性交による感染もあるのでしょうか。
A.輸血、医療行為による感染
感染経路の第一番目として重要なものは輸血でした。まだHCVの存在が知られていなかったころ、献血者のHBVの検査が施行されてから、輸血後のB型肝炎は激減しましたが、輸血後肝炎は思ったほど減りませんでした。そして、この輸血後肝炎の原因の大部分(90%以上)がHCVによるものであることがこのウィルスの発見とともに明らかにされてきました。現在は、献血者のHCVの栓査が施行されているので、輸血によるHCV感染の危険性はほとんどなくなったと考えてよいでしょう。
B.母子感染
これまでの報告では、母子感染に関しては否定的な報告が多いのですが、遺伝子解析を行い、母子3代にわたる感染と考えられる家系の存在も報告されており、また、C型慢性肝炎の母親から生まれた子を追跡調査し、母子感染と考えられる症例を見出したとの報告もあります。さらに、小児のC型肝炎患者の家族を調べると、母親がC型肝炎であるケースが多く、母子感染は頻度は低いながら存在することは確実のように思われます。したがって、HCV抗体陽性の方の子供さんもHCV抗体の有無について早期に調査し、もし陽性の場合はこれからの経過を厳重に追っていく必要があるでしょう。
C.性行為による感染
HCVが性交により配偶者に感染するかどうかは感染経路を究明し、予防策を講じるうえで重要な問題です。
ある施設でのC型慢性肝炎患者の配偶者の調査では、配偶者295例中25例(8.5%)でHCVが陽性でした。これは一般人口における陽性率が1%前後であることを考えるとかなり高い数字であるといえます。配偶者間の感染は頻度はそれほど高くはないが確実に存在するものと考えられていますので、HCV抗体陽性者の配偶者も定期的に検査する必要があるでしょう。
D.その他の感染経路
上に述べた感染経路のほかに、歯科治療や内視鏡などの医療行為によって感染することはないか、あるいは鍼灸治療などで感染することはないかといった質問を受けることがあります。
これらについては全く可能性はないとはいえませんが、関係者が正しい知識をもって対処すれば感染は確実に防ぐことができます。