慢性C型肝炎 – 治療 – 抗ウイルス療法
C型肝炎
2008年08月04日
C型慢性肝炎の抗ウィルス療法には、IFN-α、β、γ、およびリヴァルビンなどの臨床成績が報告されています。しかし抗ウィルス効果、臨床効果が明らかにされているのはIFN-α、βで、その他の薬剤の評価は今後の課題です。わが国でIFN-α、β製剤がC型慢性肝炎に対して保険適用になってから約2年が経過し、臨床成績が集積され、臨床効果、抗ウィルス効果が確認される一方、今後の問題点も浮き彫 りにされてきています。
C型慢性肝炎に対するIFN治療の効果判定は、IFN療法終了後のGPTの推移から判定されています。IFN終了6ヶ月以内にGPTが正常化し、以後もGPTが正常域で推移する例を著効例とすると、著効例の約90%は、HCVが持続陰性です。また、各種HCV抗体価は、著効例ではIFN療法終了6ケ月後に前借の50%以下に低下するので、HCV抗体価の低下率からIFNの抗ウィルス効果の判定が可能です。具体的にはHCVが排除できる人は30%ぐらいであり、相当好条件 が整っている方でのみ有効です。好条件というのは、一つはHCVの量が少ないこと、それからHCVの型が2a型ないしは2b型という排除の良好なタイプのHCVであるということ、病気が進行して肝硬変に近くなっていないような、なるべく初期の症例が良いことがわかっています。
C型慢性肝炎に対するIFN治療の最も有効な用法、用量は明らかではありませんが、IFNの抗ウィルス効果、臨床効果、ウィルス側の要因(HCV量、HCVの型)と患者側の要因(年齢、肝の病理組織学的所見)とによって異なるので、IFN治療開始前に症例を十分に解析し、症例によって用法、用量を設定するのが合理的でしょう。
初回のIFN治療によって著効とならなかった症例に対する再投与後の著効率は約13%で低率です。再投与後の著効例は、再投与開始時のHCVの量が少ない、HCVの型は2a型が多い、罹病期間が短い、などの所見のほか、初回治療時には、一過性にGPTが正常値となり、HCVの量が減少する、いわゆる”一過性有効例”のみでした。
・IFNの副作用と対策
慢性C型肝炎のIFN治療例の増加にともなって、重篤な副作用の報告が見られるようになってきました。そして、IFN使用上の注意も厚生省薬務局安全課長通知により、適時改訂されています。改訂された使用上の注音では、死亡例が報告されている間質性肺炎、自殺企画に関しては警告という形で強調され、IFN投与禁忌症例として、従来のIFNに対する過敏症例に加えて、小柴胡湯投与中の患者、自己免疫性肝炎が追記されました。副作用がどうしておこるのか、現在不明ですが、IFNの免疫調節作用が主に関与していると考えられています。
慢性C型肝炎に対してIFNは一般に6ケ月間投与されます。副作用の発現時期は投与期間によって特徴があり、開始直後は感冒様症状、1-2週間頃白血球・血小板減少、蛋白尿、1ケ月頃より間質性肺炎、抑うつ、神経症状、消化器症状、その後、脱毛、自己免疫疾患の発症があげられます。それぞれの副作用の重症度、経過はさまざまです。最も頻度の高い感冒様症状白血球・血小板低下は、IFNを継続しているうちに慣れの現象で症状は軽快し、重症例でもIFN投与を中止するのみですぐ改善します。しかしまれな副作用ですが、精神障害、間質性肺炎、甲状腺機能障害、糖尿病、自己免疫疾患の悪化などは、IFN投与を中止後も症状改善しない症例や、重症化する例、死亡例の報告もあり重大な副作用であるといえます。
また、眼底出血による飛蚊症、視力低下、耳鳴、眩畢などもIFNの副作用として発症し、眼科、耳鼻科的観察も必要です。特に眼底出血では失明例の報告もあり、IFN療法中は定期的な眼科通院を要します。
このようにIFNの副作用は多岐にわたります。医師は常に副作用に留意し、IFN療法を施行すること、そして、早期発見によるIFN投与の中止が副作用を悪化させないためのポイントで、患者およびそ の家族へ十分な副作用に関する説明をすることが重要です。